Terra Beans
私たちの答えは、「自分好みの飲み頃の豆を、淹れる直前に挽くこと」です。 焙煎した豆は3日ほど寝かせたころから香りが開き、焙煎が深いほど、その香りは早く失われます。 だから焙煎日を袋に明記して、飲み頃に間に合うように送り出します。 千葉県柏市の、小さな自家焙煎所です。
飲み頃と、挽きたて
コーヒーは、焼いたその日がいちばんおいしい──と言われることがあります。
私たちは、そうは考えていません。
いちばん大事なのは、挽きたて
豆は、淹れる直前に挽いてください。これが何よりも効きます。 挽いた粉は表面積が一気に増え、香りが飛び、空気に触れて味が痩せていきます。 極端に言えば、プロのバリスタが1週間前に挽いた粉で淹れた一杯より、 素人が挽きたてで淹れた一杯のほうがおいしい──私たちはそう考えています。 だから当店は、豆のままお届けしています。
焙煎が深いほど、風味は早く失われる
焙煎が深くなるほど豆の細胞は大きく開きます。香りが立ちやすくなる代わりに、 その香りが外へ逃げるのも、空気が中へ入るのも速くなります。 深煎りは、おいしい時間が短いのです。 だから当店は、深く焼いた豆ほど寝かせずに送り出します。
焙煎日を、袋に明記しています
いつ焙煎されたのか分からなければ、いまが登り坂なのか下り坂なのかも分かりません。 袋に焙煎日を印字しているのは、あとどれくらいがおいしい時間なのかを、 ご自身で判断していただくためです。
風味を楽しめる目安
| 中深煎り 〜 深煎り | 焙煎後 3日ごろ 〜 2〜3週間 |
|---|---|
| 浅煎り 〜 中煎り | 焙煎後 10日ごろ 〜 4週間 |
焙煎直後の豆は炭酸ガスを多く抱えていて、お湯の通り道を邪魔するため味が出にくい状態です。
3日ほど置くと落ち着き、そこから風味を楽しめる時間が続きます。深く焼いた豆ほど、その時間は短くなります。
ただし、これは好みの問題でもあります。ガスの強い若い豆が好きな方も、
落ち着いてからの甘さを好む方もいます。日付が分かっていれば、ご自分の好きな日を見つけられます。
豆の紹介
宝石の名前をつけて、焙煎度ごとにお出ししています。
すべて200g・豆のままでのお届けです(淹れる直前に挽いてください)。
トパージオ〈中深煎り〉
ブラジル・グァリロバ農園のトパージオ種。二段階発酵による華やかな甘い香りと、奥行きのあるコク。 酸味は穏やかで、毎日飲んでも飲み飽きない Terra Beans の看板豆です。
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オニキス〈深煎り〉
ひとつの実にひと粒だけ丸く育ったピーベリーを、深煎りでコクに振り切りました。 苦味の奥にカカオのような甘さ。ミルクに負けないので、カフェオレにもそのまま使えます。
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ジェイド〈中深煎り〉
グァテマラ・パストーレスのピーベリー。チョコレートとローストナッツを思わせる甘苦さが主役の、 素直で飲みやすい中深煎りです。
ガーネット〈中深煎り〉
ケニアのAAトップグレード。カシスや黒すぐりを思わせる果実味と、厚みのある飲みごたえ。 他の豆とは違う華やかさを持った一杯です。
ブレンド No.1〈中深煎り〉
マンデリンの厚みを土台に、グァテマラの甘さとタンザニアの柑橘を重ねました。 濃く淹れても重く残らない、当店の定番ブレンドです。
焙煎のこだわり
焙煎理論で設計し、色で決める
近年の焙煎理論をもとに、豆ごとに温度と時間の設計図(プロファイル)を組み立てます。ただ、最後に信じるのは設計図より目の前の豆の色。焼き上がりは挽いた粉の色をAgtron値で測り、狙った深さに入っているかを確かめます。
自社開発アプリで、一釜ずつ記録
焙煎中の温度の動きと焼き上がりの色を、自社で開発したアプリに一釜ずつ記録しています。温度計の数字は焙煎機ごとに意味が違うので、頼れるのは自分の焙煎機の記録だけ。同じ豆を次に焼くときは、前回の記録を見て設計を直します。
丁寧なハンドピック
焙煎の前と後の2回、欠点豆をひと粒ずつ手作業で取り除きます。虫食いや未熟な豆は、一杯に雑味を残します。雑味のない、澄んだ味わいのために欠かせない工程です。
小さく焼いて、飲み頃に届ける
大量に焼いて倉庫に積んでおく、ということをしません。一度に焼くのは、多くても500gほど。売れ行きを見ながらこまめに焼き、焙煎日を袋に書いて、豆のまま、飲み頃に間に合うように送り出します。
焙煎の現場から
焙煎プロファイルの記録
焙煎中の温度推移をリアルタイムに記録。毎回の焙煎をデータとして残し、狙いどおりの味を再現します。
生豆から一杯まで、データで管理
生豆・焙煎・抽出のデータを一元管理する自社開発アプリ。測定機器と連携し、濃度(TDS)まで数字で確かめます。
ひと粒ずつ、手で選ぶ
焙煎の前後に欠点豆を手作業で取り除きます。地道な工程こそが、雑味のない澄んだ一杯をつくります。
マニアックな話
ここから先は、少し細かい話です。
私たちが何を見て、何を数えながら焙煎しているのかをお話しします。
「中深煎り」を、数字で言うと ── Agtron(アグトロン)の話
中深煎り、深煎り。焙煎度を表す言葉は、お店ごとに基準が違います。 ある店の中深煎りが、別の店では深煎りと呼ばれていることも珍しくありません。
そこで世界の焙煎所が使っているのが Agtron(アグトロン) という数値です。 焼き上がった豆に光を当て、その反射で色を数値にします。数字が大きいほど浅く、小さいほど深い。 目ではなく機械が測るので、誰が見ても同じ値になります。
当店は、挽いた粉の状態で測った値を基準にしています。豆のまま測ると表面の色しか見えず、 中まで火が入っているかが分からないためです。狙いを数字で置き、焼くたびに測って、次の一釜の設計に返しています。
| 浅煎り | 70 前後 |
|---|---|
| 中煎り | 60 前後 |
| 中深煎り | 50 前後 |
| 深煎り | 40 前後 |
数字が大きいほど浅く、小さいほど深い ── 明るさの数値なので、焼くほど下がっていきます。 上の数字は当店の測り方(粉・押し固めて測定)での目安です。 Agtron にはいくつかの尺度があり、測定器のメーカーによっても値に差が出ます。 他店の数字と1〜2ポイント違っても、それは焙煎の違いではなく測り方の違いであることがあります。
豆のままの値と、挽いた値は違う ── 見た目の色と、中身の色
当店は焙煎のたびに、豆のままと挽いた粉の両方を測っています。 そして、この2つは必ずずれます。
豆のまま測って見ているのは、表面の色です。人の目に映るのと同じ、見た目の色。 焙煎で最初に色づくのは外側なので、表面は中よりも濃く焼けています。だから豆で測ると暗い値が出ます。
挽くと、いままで隠れていた内側が表に出てきます。中心は外側ほど焼けていないので、 粉で測ると明るい値になります。
たとえば9月17日に焼いたタンザニアでは、豆のままが 41.8、挽いた粉が 54.1。 その差 12.3ポイントです。同じ豆を、同じ機械で、続けて測ってこの差が出ます。
そして、この差そのものが読みどころです。差が大きいということは、 外側と内側の焼け方が離れているということ。表面だけ先に色がつき、芯まで火が入りきっていない状態です。 見た目には「しっかり焼けた深煎り」に見えても、飲むと軽い、という豆はここに理由があります。
だから当店は、色の値そのものと同じくらい、豆と粉の差を見ています。 見た目の色だけで焙煎度を語らない ── これも「粉で測る」を基準にしている理由です。
同じ粉なのに、測り方で1ランク変わる ── タンピングの話
ここからが本題です。Agtron は「正しく測れば誰でも同じ値になる」──と言いたいところですが、 実際には 同じ粉を測っても、測り方で値が大きく動きます。
測定用の皿に粉を入れるとき、上から軽く押し固める(タンピングする)かどうか。それだけで変わります。 押し固めると粒のすき間が潰れ、すき間に入り込んで戻ってこなかった光が返ってくるので、明るい値=浅い側に出ます。 すり切って均しただけだと、すき間が多いまま 暗い値=深い側 に出ます。
当店が同じ1回分の粉で6回続けて測った記録では、押し固めた3回の平均が 59.9、 押し固めなかった3回の平均が 53.6。その差 6.2ポイント。 焙煎度の呼び名でいえば、平気で1ランク変わってしまう差です。同じ粉、同じ日、同じ機械でこれです。
つまり Agtron の数字は、測り方を決めて初めて意味を持ちます。 当店は「粉で測る・押し固めて測る」を社内の決まりとして固定し、記録に残した値はすべて同じ条件で測っています。 公開している数字も、その条件のものです。
温度計の数字は、そのままでは借りられない
焙煎の教科書には「1ハゼは○○℃」といった数字が出てきます。 ところが、その数字をそのまま自分の焙煎機に持ち込むことはできません。 焙煎機によって、温度計が測っているものが違うからです。
当店の焙煎機が表示しているのは、豆そのものの温度ではなく、庫内の空気の温度です。 数字の意味が違うので、よその℃を真似ても同じ焼き上がりにはなりません。
では何を頼りにするのか。私たちは色を基準にしています。温度と時間はレシピの出発点にすぎません。 実際、設計上は220℃まで引くはずだった豆を、217℃で降ろしたことがあります。 そこから先は色の進みが急になると判断したためで、測って確かめると狙いどおりでした。 理屈より、目の前の豆のほうが正しいことがあります。
1ハゼの前に、勝負はついている
焙煎で豆がはぜる「1ハゼ」は、いちばん分かりやすい変化です。 けれど当店の記録では、味の方向はもっと前 ── 豆に火が入りはじめる最初の数分で、すでに決まっていました。
同じ豆を、条件をひとつだけ変えて何度も焼いた記録があります。 後半の火力をどう動かしても、最初の数分の作り方が違うと、仕上がりの色が5ポイント以上ずれました。 「最後に調整すればいい」は、あまり効かないということです。
だから当店のレシピは、最初の数分の設計をいちばん細かく書いています。地味ですが、ここが味の土台です。
今週の焙煎
Terra Beans は、毎回の焙煎の記録をここで公開しています。
どんな狙いで、どう焼いたか──数字とあわせてお伝えします。
タンザニア ンゴロンゴロ AA++
この日は同じ豆を2回続けて焼きました。1回目は排出215℃で14分44秒、2回目が上の記録です。
1回目と2回目では焙煎機の温まり方が違うため、同じレシピでも進み方が変わります。
そのぶんを見ながら、2回目は1℃だけ深く引きました。
焼き上がりの色は、粉にして測って Agtron 54.1、豆のままだと 41.8。
豆のままは見た目=表面の色、粉は中身まで含めた色なので、この 12.3ポイントの差が
「外と中でどれだけ焼け方が違うか」を教えてくれます。
ちなみに同じ粉でも、測るときに押し固めるかどうかで 54.1 と 47.0 に分かれます。
数字を公開するなら測り方まで決めておかなければ意味がない、という話は
マニアックな話に書きました。
※ Agtron=焙煎した色を数値で表す世界共通のものさし。数字が大きいほど浅く、小さいほど深い(中深煎りで50前後)。 当店の測り方は「粉・押し固めて測定」に固定しています。
一杯ごとに、実直に。